相続遺言判決実例集…(東京家審・昭和55年2月12日家月32巻5号46頁)


  • (東京家審・昭和55年2月12日家月32巻5号46頁)
 

(東京家審・昭和55年2月12日家月32巻5号46頁)


 (東京家審・昭和55年2月12日家月32巻5号46頁)

「四特別受益申立人代理人は,上記退職手当,遺族扶助料及び各生命保険金が相続財産でないとしても,それらは少なくとも各受給者の特別受益とみるべきものである,と主張する。lまず,退職手当及び遺族年金について判断する。相手方Y、に支払われた上記死亡退職手当及び遺族年金は,前者が一時金,後者が年金であるが,いずれも基本的には遺族の生活保障を主たる目的としたものであると解することができる。条例又は法律の定めにより,受給権者が固有の権利を有することは,すでに判示したとおりであるが,受給権者が共同相続人の一人であるとき,共同相続人間の衡平を図るため,これら退職手当又は遺族年金を特別受益に該当するとする見解も見受けられるところである。しかしながら,(1)死亡退職手当に未払賃金の後払的な側面が含まれ,遺族年金に死亡者の出損する掛金をもとにした給付の性格があるにしても,これらは,文理上民法903条に定める生前贈与又は遺贈に当たらないこと,(2)受給権者である相続人が死亡退職手当又は遺族年金のほか相続分に応じた相続財産を取得しても,この結果は共同相続人間の衡平に反するものということはできないし,むしろ被相続人による相続分の指定など特段の意思表示がない限り,被相続人の通常の意思にも沿うものと思われること,(3)民法1044条は遺留分に関し同法903条を準用しているが,上記死亡退職手当又は遺族年金は遺留分算定の基礎に算入されながらも,減殺請求の対象にならないものと解され(減殺請求の対象になるとすると,受給権者の生活保障を目的とする条例又は法律の趣旨に抵触することになる),その結果,他に贈与又は遺贈がないとき,遺留分侵害を受けながら減殺請求ができない場合が生ずるという不合理な結果が考えられること,(4)遺族年金のような年金の場合には,特別受益額が遺産分割時期の偶然性により左右されることになり,またこれを避けるため受益者たる相続人の平均余命を基準に中間利息を控除して相続開始当時の特別受益額を評価することは受益額が事実に反し衡平に沿わない遺産分割の結果を招くおそれがあることなどの諸点に照らすと,上記退職手当及び遺族年金を特別受益と解する見解を採用することはできない。2次に,生命保険について判断する。各保険会社から受取人である申立人,相手方Y、又は相手方Y2に支払われた生命保険は,いずれも保険契約によるこれら受取人の固有の権利にもとづくものであることは,すでに判示したとおりである。受取人が相続人の一人であるとき,共同相続人の衡平を図るため,遺贈に準じ特別受益にあたるとする見解が見受けられる。しかしながら,退職手当等について述べたと同様に,(1)申立人らの受け取った生命保険金は,被相続人と保険会社との間の保険契約にもとづき申立人らが受取人として保険会社から給付を受けたものであり,文理上民法903条所定の被相続人の生前贈与又は遺贈に当たらないこと,(2)受取人である相続人が上記保険金のほかに相続分に応じた相続財産を取得しても,この結果は共同相続人間の衡平に反するものとはいえないのみならず,むしろ被相続人による相続分の指定など特段の意思表示がない限り,被相続人の通常の意思に沿うものと思われること,(3)保険金が遺留分算定の基礎に算入されながらも減殺請求の対象にならないものと解され(上記保険契約は被相続人と保険会社との間の契約であり,減殺によりこれを失効させたとしても,生命保険金が相続財産に,又は減殺請求権者に帰属することにはならない),その結果、他に贈与又は遺贈がないとき,遺留分侵害を受けながら減殺請求ができない場合が生ずることなどの諸点に照らすと,生命保険金請求権の取得が遺贈に類似した側面があるにしても,これを特別受益に当たるとする見解を採用することはできない.」

 


 

 


 

 
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